民の代わりに死に



イエスの友ラザロの復活について、時間をかけて学んできました。福音記者ヨハネは、随分と長い前置きしながら、復活の場面は簡潔に描き、更にこの奇跡のために、ユダヤの最高法院(わかりやすく言えば国会のようなもの)が招集され、ある決議がなされたという事実を再び紙面を割いて伝えています。
ユダヤの最高法院、サンヘドリンと呼ばれる議会は70名から構成されていましたが、多くはサドカイ派と言われる一派で、エルサレムに住む祭司や富裕層からなる特権階級の人々でした。イエスとの衝突をくり返してきたファリサイ派の人々は、イエスが安息日を無視し、自分を神の子と呼んだことでイエスを憎んでいましたが、サドカイ派の人々は、イエスの言動については、この時まで、ある意味無関心でした。ところが、ラザロの復活のうわさがエルサレムに広まるにつれて危機感を覚え、ファリサイ派と結託することになったのです。
彼らは言います。「この男は多くのしるしを行っているが、どうすればよいか。このままにしておけば、皆が彼を信じるようになる。そして、ローマ人が来て、我々の神殿も国民も滅ぼしてしまうだろう。」つまり、このままイエスを放っておけば、ユダヤの議会は民衆に対する指導的な立場を失い、すべてをローマに乗っ取られてしまうかも知れないという懸念を、彼らは抱いていたということです。
そこで発言したのが、この後、キリストの受難劇で大きな役割を果たすことになる「その年」の大祭司カイアファです。ヨハネはここで「その年」という言葉をくり返し使い、「その年」が特別な年であったことを印象づけようとします。「その年」の大祭司がカイアファだったのです。モーセの律法によれば、本来、大祭司という職は終身制でしたが、イエスの時代には、ローマ帝国の支配下にあって、次々と大祭司が代わっています。そのような中、カイアファのしゅうとアンナスの一族が、ローマ政府におもねり、長い間、実権を握っていたのです。アンナスの娘婿であったカイアファは狡猾な人物で、18年その職に就いていました。それは異例の長さでした。
カイアファの言葉です。「あなたがたは何も分かっていない。一人の人間が民の代わりに死に、国民全体が滅びないで済む方が、あなたがたに好都合だと考えないのか。」イエス一人を殺し、この国を救おうという彼の提案は、そこに集まり、イエスの問題で手をこまねいていた議会を忖度しての政治的な発言でしたが、誰にとって好都合かというと、「あなたがたに」とってというのですから、それは自己保身によるものでした。彼らが守りたかったのは、彼らの立場であり、既得権だったのです。そこで、ラザロの復活の直後、「その日」イエスの死が決定されました。もう過越祭が近づいていました。ラザロの死と復活は、キリストの死と復活の序曲であったと話してきましたが、ラザロが復活したその日、すでにイエスの死が、議会では決定したのです。
カイアファの言葉ですが、過越祭を目前にして、カイアファは、大祭司の特別な務めのことを思って、このような発言をしたのではないでしょうか。過越祭には全イスラエルを代表して、一年の一度だけ、大祭司が神殿の至聖所に小羊の血を携えて入り、民のために祈りました。一匹の小羊は民の身代わりの犠牲でした。ヘブライ人への手紙には、真の大祭司であるイエス・キリストのことがくり返し記されています。「キリストは・・・動物の血によらないで、御自身の血によって、ただ一度だけ聖所に入って永遠の贖いを成し遂げられたのです」と。
やがて、イエスの死を目撃したヨハネは、声を大にして叫びます。「イエスは、わたしたちのために、命を捨ててくださいまいた。そのことによって、わたしたちは愛を知りました。」「わたしたちが神を愛したのではなく、神がわたしたちを愛して、わたしたちの罪を償ういけにえとして、御子をお遣わしになりました。ここに愛があります。
春の京都聖会のロゴス神学院開校70周年記念集会で次のように教えていただきました。「自分には愛がないと思う人は、愛が一番たくさんある所に行き、そこにとどまりなさい。愛が一番たくさんある所、それは十字架です。」
「私の救いの原因である十字架、私を清め神化する十字架、天国の道である十字架、私のすべてである十字架。」
「主はすべてだ。」このひと言に尽きる。

次の日曜日は棕櫚の聖日、受難週に入ります。今年は16日がイースター(復活祭)です。

comments(0)  |  trackbacks(0)

edit  top

「主はすべてだ。」このひと言に尽きる

ナルドの香油

comments





 

trackbacks

(C) 2017 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.
Join me on Facebook Follow me on Twitter Subscribe to RSS Email me