事実から真実へ



「言っておきたいことは、まだたくさんあるが、今、あなたがたには理解できない。」
最後の晩餐の後、ゲッセマネの園に向かう道すがら、弟子たちに最後の教えを語られるイエスでしたが、その内容は彼らの限界を超えるものでした。弟子たちは混乱していました。しかし、そんな弟子たちを助けるために、来られる方があったのです。「しかし、その方、すなわち、真理の霊が来ると、あなたがたを導いて真理をことごとく悟らせる。その方は、自分から語るのではなく、聞いたことを語り、また、これからおこることをあなたがたに告げるからである。」
「真理の霊が来ると、・・・真理をことごとく悟らせる」とあります。14章26節では、「聖霊が、すべてのことを教え、わたしが話したことをことごとく思い起こさせてくださる」とありました。聖書学者によれば、「すべて」とか「ことごとく」とは、「情報の量ではなく、深みにおける十分さのこと」です。事実という情報の量だけではわからない、その背後にある真実と意味、その深みに導いてくれるのが聖霊なのです。事実から真実へ。ここでは、特にイエスの十字架の死、そして復活、その意味とその先にあるものが話題の中心になっています。
ヨハネ福音書の3章、イエスとニコデモとの対話を覚えているでしょうか。イエスは言われました。「はっきり言っておく。人は、新たに生まれなければ、神の国を見ることはできない」と。あの日、ニコデモは、「どうして、そんなことがありえましょうか」と言いました。それが彼の限界でした。しかし、いよいよイエスの十字架の時が来たので、真理の御霊が、新たに生まれるという神の国の現実を、ことごとく悟らせてくださる時が来たのです。
「その方、真理の霊が来ると、あなたがたを(十字架に)導いて(神の国の)真理をことごとく悟らせる。」「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである。」

イエスの言葉は、「この方は、・・・これから起こることをあなたがたに告げるからである」と続きます。「これから起こること」とは、直接的には十字架と復活の後という、直近の出来事を指していますが、同時に、私たちの「これから起こること」とも読むことができるかも知れません。私たちの限界、想像を超えた問題、人生最大の問題は、死とその先にあるものではないでしょうか。
先日、教会員のYさんが89年の生涯を全うし、天国に旅立ちました。Yさんは、静岡は小山の出身ですが、幼い日に、クリスチャンであったお祖母さまを通してキリスト教に触れました。戦時中、まだクリスチャンが敵国のスパイのように見られていた時代のことです。終戦後の昭和21年(18歳の頃)、妹さんから「キリストを内住している先生がいる」と聞き、小山教会のU牧師ご夫妻と出会い、聖イエス会に導かれました。その頃、夢中になって読んだ『サンダー・シングの思想とその生涯』に記されていた言葉がYさんの青年時代に強い影響を与えます。「弦を離れた矢のごとく、青年サンダー・シングの心はキリストに向かい、何ものも翻すことはできなかった。」そして、昭和27年、高浜で始まったリバイバルの中、ついにその年の秋、東京で生けるキリストを「我は復活なり、命なり」との御名によって、心に迎えられました。その後、名古屋に転勤となり、以来、名古屋教会の中心メンバーとして信仰に励まれました。
前夜式が終わって、棺の中で眠っているYさんの安らかなお顔を見た時です。聖書の一句が私の脳裏に閃きました。マルコによる福音書1章1節、「神の子イエス・キリストの福音」。Yさんの洗礼名は、マルコによる福音書を書いた「マルコ」でしたが、使徒ペトロの説教とも言われる、マルコによる福音書の特徴は、とても簡潔であることです。マルコは飾り立てることなく、ありのままのイエスを伝えました。だから迫力があります。文体は磨かれたものではなく、子どものようです。「また」という接続詞を使ってどんどん物語が進められていきます。そして、「すぐに」という言葉がくり返され、休む間もなく、神と人々への奉仕に明け暮れるイエスの姿が描かれます。別名、「行動する福音書」と呼ばれる所以です。簡潔で、迫力があり、子どものようで、行動的。どれもYさんの性格そのままだと思い、あの夜、私はYさんの存在のうちに、マルコによる福音書を読みました。これが真理の御霊である聖霊が教えてくださる私たちの「これから起こること」です。
「キリスト者の召命は、神の顔となること、自分が生きた福音となること。」アーメン。

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